今年、すごく久しぶりに読書を再開した、ということで、この著者の作品はまだ読んだことがなくて。
以前読書していた頃、エッセイを読むのは好きでしたが、作品を読んだことのない方のエッセイは、初めてだったかもしれません。
だけど、おもしろくて、あっというまに著者の世界にひきこまれました。
この記事では、友人にオススメしてもらって読み始めた、『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』『そして誰もゆとらなくなった』という、ゆとり3部作の簡単な感想を書こうと思います。
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ざっくりこんな本でした
【読書リスト】2023年|子育て主婦が電子書籍で読んだ本と簡単な感想の簡単な紹介でも書きましたが、著者は、さくらももこさんの『もものかんづめ』などのエッセイがとても好きだったとか。
そういう ”おかしみに満ちた” 三部作を出すのが夢だったそうです。
叶っていてすごいです
さくらももこさんではなく、朝井リョウさんによるこの三部作は、『時をかけるゆとり』で走り出し、『風と共にゆとりぬ』で加速し、『そして誰もゆとらなくなった』で特急になるかと思ったら海に入った?(=深みを感じた)感覚を受けました。
こんな表現、伝わるか分からないですけど…ただそう思ったんです
全体的に、日常生活を通して、クスッと笑えるエピソードがたくさん書かれていました。
ときどき出てくる写真も、いい味を出していました。
- 自分が経験したことのないことでも、なんかどこか共感できる気がしたり
- 臨場感あふれる表現のおかげで、その場面に居合わせているような感覚にさせてもらえたり
やっぱり小説を書く人ってすごいんだなぁとも思った、エッセイです。
気になったエピソード3つ
ここからは、3冊の本から1つずつ、気になったエピソードを取り上げようと思います。
3つとも、きっと著者の意図していない意味で、取り上げてるかも。すみません。
『時をかけるゆとり』からふるさと
『時をかけるゆとり』からは、著者が旅行に行ったときのエピソードを。
ニューヨークにいると、日本が遠くて。
近くの海を渡ってもヨーロッパに行くだけだし、太平洋を拝むには、飛行機に約6時間も乗らないといけない(ニューヨークからロサンゼルスで大体それくらい)。
そんな記事を書いたこともあります。
ふるさとで当たり前に流れている時間を、私も見ることができない。
著者が旅行に失敗した、というエピソードの中から、そんな ”無性に、さみしかった” 気持ちが、とても伝わった記述があって、ちょっぴり切なくなりました。
といっても、全体的には明るくて楽しい本です。
『時をかけるゆとり』は、まず著者に関係することの書かれた年表から始まるのですが、そこもユニークでおもしろかったです。
学生編20話と、社会人編3話から構成されていることから分かるように、本書は、学生時代のお話中心のエッセイでした。
『風と共にゆとりぬ』からレンタル彼氏
『風と共にゆとりぬ』では、”子どもにとっての言葉” に書かれていた文章に感銘を受けましたが、ここでは ”対決!レンタル彼氏” というエピソードを取り上げます。
”対決!レンタル彼氏” というのは、仕事関係者のUさんと、Uさんが「レンタル」した「彼氏」、Uさんの弟になりすました著者が、3人で食事をするというお話です。
設定は、Uさんが両親から早く結婚しろと言われているため、「彼氏」を弟 (のふりをしている著者) に会わせて安心させよう、というもの。
そもそもこの話は、著者が ”誰かになりきる場” がほしかった、というところから始まったそうです。
えー、誰かになりきりたいなんて思ったこともない
そして、食事会の中で感じたこととして、
全員がウソをついているって、なんて楽なんだろう。誰も本当の自分を指し出していないので、心がすり減るようなタイミングが一切ないのだ。
人間関係が時にとても疲れるのは、みんな、きちんと本物同士で関わりあっているからなのだろう。
と書かれていました。
ウソの関係がとても長くなると、違う意味で心がすり減りそうな気もしますが、でも著者の言っていることはなんか分かる。
きっとそうなんだろな。
こんなふうに、明らかに自分とは全然違う性格で、私だったら絶対しないなぁ、できないなぁ (余興の話なども) っていうエピソードも多かったです。
が、全然違う人の行動や、頭の中や、感じたことを見せてもらえるのも、エッセイを読むおもしろいところなのかな、とふと思いました。
私は、以前読書をしていた頃、だからエッセイを読むのが好きだったのかな。
ちなみに、このエピソードの最後には、おもしろいオチまでついてきます。
そんなところも好きです。
私にはできません!
なんでそこを自分と比べるねん…
『そして誰もゆとらなくなった』からNY旅行
3冊とも、どのエピソードも好きなんですけれど。
ニューヨークに住んでいる人間として、『そして誰もゆとらなくなった』からは、ニューヨーク旅行のエピソードを取り上げることにします。
- きっと思ったより狭いし
- 物価は高いし
- 親切でない人もいるかもしれないし
- 臭いときもあるし
- 外で使えるトイレも少ないし
でも来てよかったなぁって思ってもらえると、なんか嬉しいと思って。
ドキドキしながら読みました。
ブルックリン・ブリッジって当たり前にあの長さだと思っていたけれど、そっか、思ったより長く感じたりするんだ、とか。
私も、旅行で来た時、チェルシーに泊まったことあるなぁ、とか。
セントラルパークで聴ける、無料のニューヨーク・フィルハーモニー。そうなんだ、ほとんど聴こえないこともあるのかぁ。一度くらいは行っておこうと思ってまだ行けていないから、参考になるなぁ、とか。
完全に自分に照らし合わせて、読ませてもらいました。
ニューヨークって遠いし、なんだこんなもんか、ってなるかもしれないけど、なんとも言えない魅力もあると思うので。
ぜひいろんな人に来てもらえるような世の中に、早くまたなってほしいです。
最後に、きっともう指摘されたことがあると思うのですが、”マディソン・スクエア・ガーデンのシェイクシャック”ではなくて、”マディソン・スクエア・パークのシェイクシャック”のことかな?と。勘違いならごめんなさい。
”マディソン・スクエア・パークのシェイクシャック” は、発祥の場所なので、いつもたくさんの人が並んでいる印象があります。多分ですが、観光客も多いんじゃないかな。
そして著者のおっしゃる通り、日本はなんでも美味しいので、アメリカから進出しても、すぐに、まぁこんなもんかな、ってなっちゃうんですよね。
ピーター・ルーガーとかウルフギャング・ステーキハウスとかは大丈夫かなぁ。
って、ちょっと心配になりました。
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まとめ
『そして誰もゆとらなくなった』の、読者からの手紙のくだりで著者が書かれていたように、この感想も、本の感想というより、自分のこと・NYに関連することがほとんどになりました。
よく分かっていらっしゃいます
ここでまとめとして。
著者は、とても観察力のある、自分をすごく客観視できる、独特の感性をお持ちの人だなぁと感じました。
そして、ものの例え方や表現がすごく豊かで、小説家ってやっぱりすごいんだなぁ、と。
同時に、私ってやっぱりつまんないな〜って、自虐とかではなくて、ただただそう再認識してしまいました。何度も何度も。
つまらない人間だからこそ、本を書くでもなく、エッセイを書くでもなく、ただ平凡に生きていて、おもしろいわけでもない文章をこうして書いているわけなんですけどね。
これらの3冊は、養老孟司さんの宗教や死や人生論などの本の合間に読んでいたからでしょうか。ずっと、清涼剤のような存在に感じて、楽しく読めました。
著者とは、性別も違うし、生きてきた世界も違うし、性格もこんなに違う。
でもなんか、それがおもしろかったです。
肛門関係の話題に抵抗なければ、幅広い年齢層の人が楽しめる本だと思います。

オススメです
また著者のエッセイが出たら、その時はぜひ読ませてもらいたいと思います。
以下3冊とも、朝井リョウ (著)、文藝春秋
『時をかけるゆとり』
『風と共にゆとりぬ』
*2023.02 に読みました